「大人の歯が生えてきたら、歯ならびが悪くなってしまった」とあわてる方が多いですが、お子さまによって適切なスタート時期や治療法は異なります。まずはご相談ください。
子どもの矯正は「一期治療」と「二期治療」に分かれています。
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乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」の治療です。永久歯に生え変わる前に治療した方が良い場合に行います。スタートの目安は上下の前歯と6歳臼歯(第一大臼歯)が生えた頃です。
この時期は、成長を利用して顎の骨格のバランスを改善したり、歯の生え変わりを誘導したりすることが可能です。一期治療で顎の骨格の問題を改善しておくと、「永久歯列完成後に行う二期治療の期間が短くなる」「抜歯矯正をせずに済む」など、大きなメリットがあります。
一期治療の後は、すべて永久歯に生え変わるまで経過を見ていきます。舌の癖や口呼吸など、歯ならびや顎の成長に悪影響を及ぼす癖がある場合は、舌や唇のトレーニングを行います。
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すべての歯が永久歯に生え変わり、12歳臼歯(第二大臼歯)が生えた後に行う仕上げの矯正治療です。大人の矯正と同じ方法で歯全体を動かします。
一期治療と二期治療はセットで行われますが、問題点が十分に改善された場合は、一期治療のみで終了することもあります。
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歯に関する悩みや治療についての疑問、不安、要望などをお聞きします。おおよその治療期間や費用、使用する装置、治療のメリット、デメリットなどをお伝えします。
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治療計画を立てるための資料として、歯と頭部のレントゲン撮影、歯と顔の写真撮影、歯型のスキャン、顎関節・顎運動・舌などの診査を行います。必要に応じてCT撮影も行います。
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精密検査の結果を元に、治療計画と費用について詳しくご説明します。内容にご納得いただけましたら、治療同意書にサインをいただきます。
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矯正装置の使用を開始します。一期治療では、主に取り外しのできる装置を使用します。
通院頻度 1〜3か月毎
期間 2年程度
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顎の成長と永久歯交換の経過を観察します。問題点が改善されたら一期治療終了です。顎が成長し、永久歯に生え変わった後に問題点が残る場合は、相談のうえ二期治療へ移行します。
通院頻度 3〜6か月毎
期間 永久歯に生え変わるまで
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治療開始前に再び精密検査・診断を行います。後日、矯正装置を装着し、歯を動かしていきます。二期治療は大人の矯正と同じ方法になります。
通院頻度 1か月毎
期間 2年程度
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歯の移動が終了したら矯正装置を外し、リテーナー(保定装置)の使用を開始します。リテーナーはきれいに並んだ歯を、その位置で安定させるための装置です。保定期間中も定期的に来院し、歯やリテーナーに問題がないか確認しましょう。
通院頻度 3〜6か月毎
期間 最低2年
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顎の骨をゆっくり広げて、大人の歯が生えるスペースを作る装置です。
「拡大床」は主に寝る時に口にはめて使います。ネジで装置を広げながら使い、顎の骨を拡大させます。
「Wタイプ拡大装置(クワドヘリックス)」は歯に取り付けてバネの力で顎の骨を拡大させます。
治療例
歯ならびが悪い
歯列の狭窄を伴う混合歯列期の叢生
9歳
上下顎 拡大床/前歯部 マルチブラケット装置
なし
拡大床18か月→マルチブラケット装置6か月
約50万円 税込
歯の痛み/歯根吸収/後戻り
主に寝る時に上下の歯に拡大床を装着し、1週間に1度ネジを回してもらいました。狭い歯列が広がり、歯ならびの改善と同時に、前歯の前突が解消されました。この後も、歯の生え変わりの経過観察をしていきます。
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機能的矯正装置の一つで、顎の骨を拡大させながら下顎の成長を誘導する装置です。
下顎が後退している上顎前突(出っ歯)の改善に使います。
治療例
歯ならびが悪い/歯が出ている
過蓋咬合と下顎骨後退を伴う混合歯列期の上顎前突
9歳
バイオネーター
なし
24か月+生え変わりの経過観察
約50万円 税込
顎関節の違和感/後戻り
主に寝る時に装置を装着してもらいました。歯列の拡大により永久歯が全てきれいに生え揃い、下顎が正しく成長したことで横顔も整いました。
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一部の歯を押して動かす装置です。
前歯の反対咬合(受け口)の改善などに使います。
治療例
受け口
上顎前歯の舌側傾斜による混合歯列期の機能性反対咬合
10歳
上顎 アクティブプレート
なし
4か月
約40万円 税込
顎関節の違和感/歯根吸収/成長期における反対咬合の再発
主に寝る時に装置を装着し、内側に入っている上の前歯をバネの力で前に出しました。前歯のかみ合わせが改善した後も、歯の生え変わりや、顎の成長の経過観察をしていきます。
矯正歯科治療に伴い、以下のようなリスクや副作用が生じる可能性があります。
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矯正装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがあります。一般的には1週間程度で慣れてきます。
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歯の表面に装置をつけるので、正しく歯みがきできないと汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。また、歯が動くことにより、今まで隠れていた虫歯が見つかることがあります。
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歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや、歯肉がやせて下がることがあります。
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ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
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ごくまれに歯を動かすことで歯の神経が障害を受けて壊死することがあります。
06
矯正装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
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治療中に顎関節の痛み、口を開け閉めすると顎関節で音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
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歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行うことがあります。
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矯正装置を誤飲することがあります。
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矯正装置を外す際に、歯の表面に微小な亀裂が入ったり、かぶせ物(補綴物)が破損したりすることがあります。
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矯正治療後の新たな咬み合わせに合わせて、かぶせ物(補綴物)や虫歯の治療(修復物)のやりなおしが必要になることがあります。
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矯正治療後に保定装置を適切に使用しない場合、歯ならびとかみ合わせは後戻りします。
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矯正治療後も、顎の成長発育、加齢、歯周病、親知らずの影響で歯ならびやかみ合せが変化することがあります。
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矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。